駒形 亮 本研究は2011年まで約80年間供用されてきた旧可動堰の管理橋および堰柱について,劣化損傷・構造特性を把握することを目的とした.解体に伴って実地調査を行い,管理橋については底面損傷図を,堰柱については配筋予想図を作成した.また,解体時に採取した鉄筋について引張試験を行った.結果として,旧可動堰には鉄筋露出などの損傷が確認されたものの,現在でも構造物としての性能を十分有していることが判明した.
key words: 旧可動堰,管理橋,堰柱,配筋,劣化損傷
中島 健人 本研究は,平成16年度から23年度の間に2度点検が実施された,北陸地方のある道路管理者が管理する橋梁を対象に,劣化・損傷傾向を把握することを目的とした.点検のデータベースの作成およびそれを用いた統計分析を行い,統計を元に点検調書の損傷写真による沿岸部などの立地条件別等の損傷状況について,より詳細な検討を行った.結果として,耐久性能に影響を与えるような大きな損傷は古い橋梁で発生している割合が高くなることや,塩害地域における橋梁の損傷要因のほとんどが土砂詰まり等の排水不良であるなど,損傷パターンとその要因についていくつかの傾向が確認された.
key words: 橋梁,維持管理,定期点検,劣化・損傷状況,損傷要因
赤原 健太 橋梁の維持管理の重要性は高くなっているが,現在用いられている定期点検は多くの労力と費用が必要であるため,定期点検の前段階として,定期点検のような詳細な点検の必要性を判断できる簡易的な点検の実施が有効だと考えられる.本研究では,簡易的に点検を可能とする概略点検システムを構築し,点検現場でタブレット端末を使用して,点検結果の入力とデータ処理の省力化を図った.この概略点検の使用性や妥当性を検証するため,実地試験を実施し,過去の定期点検結果との比較を行った.その結果,ある程度の妥当性といくつかの問題点が確認された.
key words: 概略点検,タブレット端末,データベース,実地試験
内山 拓也 日本海沿岸部で約35年間供用され,塩害により鋼材腐食が生じたプレテンションPC桁橋について,まずひび割れ観察及び打音検査を行った.その後,曲げ載荷実験を行った結果.A桁は斜めせん断破壊,B桁は曲げ破壊した.載荷後に引張側のPC 鋼材をはつりだし,腐食量や破断・消失位置を確認し,耐力評価を行った結果,計算値は実験値よりやや小さく評価することがわかった.
key words: プレストレストコンクリート,塩害, 鋼材腐食,耐力評価,維持管理
渡辺 啓太 動的解析を精度よく行うためには,構造物の基本的な構成要素であるはりや柱部材の静的変形特性を把握することが必要である.本研究ではまず,曲げ破壊する部材に対して適用性が高いとされるファイバーモデルの解析精度を確認するため,RC柱,RCラーメン構造,RCはりを解析対象として静的解析を行い,それぞれ既往の実験結果の荷重‐変位関係と比較を行った.その結果,解析結果が実験結果をよく再現していることが確認できた.次に,79年間塩害環境下にさらされて劣化したRCはり桁を対象として,静的載荷実験結果と静的解析結果を比較するとともに,比較的健全な中桁と比較的腐食が進んだ外桁で構造系全体の地震応答解析を行い,地震時における耐震安全性の検討を行った.その結果,中桁の応答は弾性域内で収まっているのに対し,外桁では,塑性域に移行し残留変位が残る結果となったため,劣化するはり桁を有する橋全体系は耐震性が低下することが確認された.
key words: 鉄筋コンクリート,ファイバーモデル,静的解析,地震応答解析
荒川 岳 FRP製部材を適用した構造物は,塩害をはじめとする種々の腐食に対して高耐食性を有するため,その長所を活かして既に短スパンの単純桁歩道橋が実用化されている.しかし,歩道橋の設計に際してはその振動使用性の検討は重要な設計項目であるにも関わらず,FRP製構造物の振動特性は未だに不明瞭な点が多い.本研究ではFEM解析ソフトウェアOpenSeesを用いた静的および動的解析を行い,実大橋実験報告との比較を行うとともに,FRP橋梁の振動特性把握を試みた.結果,報告記載の固有振動数の再現に成功し,応答変位に関しては従来の構造に比べ微振動の挙動を示した.
key words: 繊維強化プラスチック(FRP),トラス歩道橋,有限要素解析,OpenSees,スペクトル解析
小山 将輝 本研究では,ある単位時間に入力される地震入力単位エネルギーと,構造物の等価吸収エネルギーの両者に基づき,簡便に土木構造物の被害程度を推定する手法の精度を検討するために,従来の検証方法であるFORTRAN弾塑性応答解析プログラムと,新たに用いたFEM解析ソフトであるOpenSeesとで推定手法自体の有用性の比較を行った.結果として,地震入力単位エネルギーの値が大きくなるにつれ,FORTRANプログラムとOpenSeesの両方で一致していないものがみられたが,OpenSeesの方が一致しているものが多く,推定手法そのものの有用性が確認された.
key words: 耐震設計,地震入力単位エネルギー,等価吸収エネルギー,弾塑性応答解析
白田 幸忠 塩害を受けたコンクリート構造物を効率よく補修・補強を行うためには,劣化程度の予測・評価が必要であるが,構造物の種類,環境,調査方法が異なることもあり,コンクリート構造物の耐久性の評価に関する情報は断片的で効率的に整理されていない.本研究では調査項目を明確にし,調査した情報を迅速に整理・統合するため, Microsoft Accessを用いて,塩害による危険度判定機能を搭載した塩害対策データベースの開発を行い,サンプルデータを用いて塩化物イオン濃度の予測を行った.操作性,利便性にはまだ改良の余地はあるものの,有効性が示された.
Key Words: データベース,塩害,Microsoft Access,危険度判定
石野 亮 本研究では,積雪時の2 階建ての木造住宅を対象とした地震応答解析を行った.木造住宅の質量は屋根,外壁,内壁の違いによって算定した.また,積雪荷重P と地震による住宅の水平変位凾ノよって住宅の柱脚部に発生する力のモーメント,すなわちP・剏果についても検討を行った.結果として,P・剏果の影響を大きく受けるのは固有周期の長い古い住宅であることがわかった.また,地震波の卓越周期と一致する時,少ない積雪量の変化でも大きい影響があることがわかった.
Key Words:積雪荷重,木造住宅,地震応答解析,応答加速度,P・剏果
齋藤 明幸 土木構造物の建設素材として繊維強化プラスチック(FRP)が注目されてきているが,橋梁に関しては施工例がほとんど無く,その地震応答特性は詳しく把握されていないのが現状である.また,兵庫県南部地震以降は動的解析による設計の検証が重要視されていることを踏まえ,本研究では従来からの一般的な鋼材であるSS400 とFRP を組み合わせたハイブリッドトラスに対して動的有限要素解析により時刻歴地震応答解析を行い,FRP 製橋梁の地震応答特性の把握を試みた.その結果,ハイブリッドトラスにおいて,応答加速度・応答変位ともにSS400 単一構造と同程度以上の有利な解析結果を得た.
key words: 繊維強化プラスチック(FRP),動的有限要素解析,地震応答解析,立体トラスモデル
大塚 洋一 RC構造物の設計は,一般的に実験により提案された回帰式によって設計されるものが多いが,数多くの部材実験結果に基礎をおく回帰式には,その適用範囲に限定される場合が多いため,限られた条件でのみ用いるのが適切である.そこで本研究では,従来のように回帰式を用いてRC 部材のせん断耐力を評価するのではなく,力学的アプローチで解くCollinsらによって提案された修正圧縮場理論(MCFT)を用いて,せん断補強筋のない高強度RCはりのせん断耐力評価を行った.また,本解析法の適用性を評価するため,既往の実験結果および既往のせん断耐力評価式との比較も行った.その結果,既往の実験結果と概ね一致し,かつ既往のせん断耐力評価式と同程度の算定精度で高強度RC はりのせん断耐力を評価できることが分かった.
Key Words:修正圧縮場理論,せん断耐力,せん断補強筋のない高強度RC はり,斜め引張破壊
松田 音羽 本研究では,平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震の地震動データを用いて,ある単位時間に入力される地震入力単位エネルギーと,構造物の等価吸収エネルギーの両者に基づき,簡便に土木構造物の被害程度を推定する手法の精度の検討を行った.解析結果より,地震波のエネルギー量の大きさやスペクトルの形状,橋脚の吸収可能エネルギー量の大小により推定の精度にばらつきがあることがわかった.また,考慮すべき固有周期は,石橋らが提案したじん性率を用いた固有周期までを用いるのが適当であることがわかった.
key words: 鉄筋コンクリート橋脚,耐震設計,地震入力単位エネルギー,等価吸収エネルギー,エネルギースペクトル
渡邉 正俊 近年,建設新素材として繊維強化プラスチック(FRP)が国内外で注目されてきており,日本国内では沖縄県において歩道橋への試験施工が実際に行われた.近い将来,設計法が性能照査型へ移行することを考慮すると,新材料の活用が有効になってくることが予想され,その一つとしてFRP の活用が考えられる.また,兵庫県南部地震を契機に,耐震設計において動的応答解析による設計の検証が重要視されてきている.本研究では,有限要素法を用いてFRP と鋼材と組み合わせて,静的解析によってハイブリッドトラスを造ったときのコスト換算重量,固有振動数および単位長重量,ならびに実地震波を入力した場合の応答加速度,応答変位についてを動的解析によって検討を行った.結果として,FRP をハイブリッドで使用した場合,適所に配置することにより,効率化の可能性をみることができた.また,動的振動特性に関しても単一素材に比べて減衰などの点で優位な結果となった.
Key Words:繊維強化プラスチック(FRP),コスト換算重量,固有振動数,単位長重量, 応答加速度,応答変位